今回は「4号特例廃止」で再注目されている、耐震についての考え方です。
ハウスメーカーやビルダーの広告チラシでよく見かける「耐震等級3を全棟標準!」
「全棟標準なら安心!」と思ったら実は落とし穴があります!
今回は、耐震等級の考え方や、耐震等級3といっても「詳しい計算で出した耐震等級3」と「簡易的な計算で出した耐震等級3」があることを紹介していきます。
検討中のハウスメーカー、工務店はちゃんと耐震等級を計算しているの?どこを見たらいいかの確認ポイントなども解説!
耐震は家づくりにおいて、非常に大事なポイントです。
頑丈な家づくりの参考になる今回の記事の重要ポイントをまとめました。
・耐震等級を計算する方法は、主に2つある。 ・詳しい計算方法「許容応力度計算」までやっているかどうか?で違いが出てくる。 ・簡易的な「壁量計算」でも建築基準法違反ではないが、建築基準法自体が甘い。 ・「構造計算」は「許容応力度計算」まで含んだ計算で、約20万円~の費用がかかる ・標準仕様で耐震等級3でも、希望のプランが耐震等級3とは限らない |
1. 耐震等級の計算方法は2つあるが別物
一般的な2階建て木造住宅を設計する上では、耐震性能を測定する計算方法には2つあります。
カンタンに解説すると簡易的な計算が「壁量計算」、詳しい計算が「許容応力度計算」です。
建築基準法では、最も一般的な木造2階建ては「壁量計算」で済ませてよい、という規定があります。
これを「4号特例」といいます。
正確には、建築基準法「第六条一項第四号に該当する建築物(500平方メートル以下、2階建て以下の木造建築物等)で、建築士(一級、二級、木造)の設計したものについては、構造設計に関する部分他について、設計者の技術水準を勘案し、建築主事の審査を要しない」という部分です。
簡易的な壁量計算で耐震設計しても、「法律で問題ないのであればいいんじゃないの?」と思う方もいらっしゃると思います。
建築基準法では問題ありませんが、同じ耐震性能を示す計算でも天と地ほどの差があります。

出典:吉田建設様 他
上図では、一目でどれくらいの計算項目が違うかわかるような比較写真をもってきました。
計算項目の違いについて次章で詳しく解説しますが、壁量計算はA4の紙に1~2枚の机上で済むような簡易的な計算です。
建築士が自ら計算をしますが、必要な壁の量や、多少の配置バランスを計算する程度です。
それに対して、許容応力度計算計算は多くの項目にわたり計算を行い、ほとんどのケースでCAD図面と連動して、パソコンでしっかり計算が行われます。
それでは、まず2つの計算がどんな計算をしているか?をみていきましょう。
2. 壁量計算と許容応力度計算の違い
2つの計算がそれぞれ、どんな計算を行っているのかを見ていきましょう。
一目でわかるような表にまとめてみました。

このように、同じ耐震性能を評価する計算でも、計算する項目が大きく異なります。
そのため、前章でご覧いただいたようなA4で1枚程度の計算と、パソコンで行って数百枚に至る構造計算書の違いになってきます。
このように、異なる計算をしていても「耐震等級1~3」の判定はできてしまいます。
実は、この異なる計算をしていても、同じように「耐震等級3」だと表現できることが建築業界の問題でもあり、課題でもあります。
3. 費用面は許容応力度計算は高額。本当に必要なの?
ただ、簡易的な計算で済まされた壁量計算でも耐震等級3じゃないの?許容応力度計算は高額だし…と思う方もいらっしゃるでしょう。
同じ金額であれば、当然詳しく計算をしてもらった方が安心、となると思いますが、ここに20万円~の金額を払って計算をする必要があるの?という疑問が出てきます。
結論から申し上げると「お金を払ってやってもらうべき大事なこと」です。
工務店やビルダーの中には、必要ないという方もいるかも知れませんが、そういった担当者は必要性を理解していないと思った方がいいでしょう。
同じ建物を、壁量計算と構造計算をした場合、壁量計算ではクリアしていたレベルから、約30%程度は耐力が不足しているケースが多く、壁量計算では不十分と言えます。
例えば、壁の量は規定をクリアしていても、建物内の重量や水平にかかる重量までは壁量計算では考慮していません。
現実では、家具や住宅設備の重さやバランスで、地震の時に家に加わるエネルギーは変わってきます。
そのため「壁量計算ではクリア」していたけど、「構造計算すると不適合」というケースも実際にありますので、地震が来た際は構造計算のとおり、倒壊や損傷する可能性が高くなります。
みなさんのマイホームで、数十万円を惜しんで簡易的な計算しかしていないばかりに、いざという時に家が損傷・倒壊して良いでしょうか?
イエジショでは、許容応力度計算をしっかり行ってもらうことを強くオススメします。
4. 建築基準法自体が甘い

さらに今回の記事で補足しておくべきポイントは、「建築基準法自体が甘い」ということです。
多くのローコストビルダーなどは、建築基準法に沿ったとおり計算しているから大丈夫、と言うでしょう。
もっともらしく聞こえるのですが、そう言っている営業マンは、この計算の違いについて詳しく知らない可能性が高いと言えます。
業界では様々な立場の専門家から、この建築基準法自体が甘いという問題を、ずっと課題定義し続けています。
なぜ厳しくしないか?という答えは、単純に建築基準法自体を厳しくすると、適応できない会社がおり事業継続できなくなるから、という理由です。
それも、全国で少なくない数の工務店・ビルダーがその状況に陥る、ということですから驚きです。
これは耐震性能だけに限らず、断熱性能などでも同様の話しがあり、正直プロでなければならない業界全体のレベルがあまり高くありません。
5. 希望のプランも耐震等級3かどうかチェック

よくある相談事例は
「標準仕様では耐震等級3」だが、「私のプランでは耐震等級3が取れなかった」という相談です。
まだ、しっかり耐震等級3が取れてないリスクまで理解して、それでも間取りやプランを優先したのであれば、それはお施主さん側の選択になるため、何も悪いことはないでしょう。
ただ、この際に耐震等級3から外れていることのリスクをしっかり伝えることができている会社はどこまでいるか?は非常に疑問です。
まだ耐震等級3が取れなかった、と言ってもらえれば良い方で、何もなかったかのように耐震等級1や耐震等級2で建築されていたという事例も。
法律としては、建築基準法と同レベルの耐震等級1を満たしていれば特に問題もなく建築ができてしまうので、やはりここは気を付けてほしいポイントです。
吹き抜けなどを設けると、一気に耐震等級3が取得しづらくなりますが、みなさんの希望のプラン・要望と共に、最低限住み続けることができる性能の担保まで考えてくれる工務店を選びましょう。
6. まとめ
それでは、耐震等級で見極めるポイントを解説してきました。
最後にもう一度、今回の記事の重要ポイントを復習しておきましょう。
・耐震等級を計算する方法は、主に2つある。 ・詳しい計算方法「許容応力度計算」までやっているかどうか?で違いが出てくる。 ・簡易的な「壁量計算」でも建築基準法違反ではないが、建築基準法自体が甘い。 ・「構造計算」は「許容応力度計算」まで含んだ計算で、約20万円~の費用がかかる ・標準仕様で耐震等級3でも、希望のプランが耐震等級3とは限らない |